伊藤研究室への配属志望学生の皆さんへ
このページでは、伊藤がどのような研究室をつくりたいか、配属学生の皆さんにどのような研究生活を送ってほしいか、 どんな学生にぜひ伊藤研究室に来てほしいか、という思いを徒然なるままに書いてみました。 このページを読まれた(主に情報科学科3年生以下の)学生の皆さんの参考になれば非常に幸いです。
伊藤研究室に関する主な数字。
伊藤研究室の財産は、意欲的な先輩陣です。皆さんの先輩のアクティビティを、以下の数字で実感してください。
- 大学院(博士前期)進学率:96%(1〜8期で47人中45人)
※うち4人は他研究室への進学 - 大学院(博士後期)進学者数:研究室創立以来11人
- 英語での論文投稿:79%(1〜6期で34人中27人)
- 海外でのBest Paper等の経験:1〜6期で9人
そして、これから配属される皆さんにも、これが当然のレベルとして研究に臨んでいただく、ということを念頭に置いてください。 例えば、目安として1年に2〜3回の学外発表、大学院に進学したら英語での学会発表。 これは伊藤研究室では義務だと思ってください。 (必ずしも情報科学科は、卒業のために上記のような基準を設けません。しかし、配属先研究室での義務は、卒業の基準とは全く別のものだと思って下さい。)
伊藤研究室は、配属と同時に、
速いペースで研究を進めます。
伊藤研究室の、配属直後の4年生の研究スケジュールは、以下のようになっています。
3〜4月 |
研究内容の概要をゼミで勉強する。 自分の興味のある研究テーマを自分で決めて、論文調査を自分で進める。 |
5月 |
研究室内合宿で発表デビュー。 発表10分、質疑20分、というスケジュールで、自分の研究テーマを紹介する。 いきなり先輩方の質問攻めにあう。 |
6〜8月 |
自分の研究内容を原稿にまとめて、学外合宿に投稿する。 研究内容に関するプログラミングを始める。 |
9月 |
他大学の学生が集まる大規模な合宿の場で、
学外発表デビュー。 1時間弱の長丁場で、優秀な他大生たちの質問を山ほど受ける。 |
このように伊藤研究室は、
4年生前期が忙しい研究室 です。
そして伊藤研究室では、
就職活動があろうが、教育実習があろうが、
毎年全員必ず、このペースで研究を進めています。
就職活動や教育実習で研究に遅れが出るようなら、
ゴールデンウィークや夏休みを研究に専念することで、遅れを取り戻してください。
研究テーマの決め方について。
伊藤研究室の研究テーマの決め方は、大きく以下の2種類にわかれます。
[パターン1]伊藤が学内・学内の専門家・関係者から委託されたり、
あるいはディスカッションを通して作った研究テーマを分けてもらう。
伊藤研究室のプロジェクトのホームページを見ればわかるかと思いますが、過去の研究テーマの中には、原子力発電所、クレジットカード不正使用、計算機ネットワーク不正侵入、薬物実験、新聞記事、といった堅実な分野の研究テーマが多く見られます。この大半は、伊藤が考えた(または学外から入手した)研究テーマに学生が着手したものです。
この形で研究テーマを選ぶことには、以下の通り、非常に多くのメリットがあります。
- 研究室外の専門家が「これは必要だ」と思って提唱した研究テーマです。よって、その研究が何のために必要であるかを説明するのは簡単です。
- 伊藤にも責任が伴っている研究テーマですから、研究が進まなくて困っている場合には、伊藤が積極的に介入します。
- 学外発表のお膳立てが揃っている場合も多く、比較的早期に学外発表に行けます。
[パターン2]自分でやりたい研究テーマを見つけて着手する。
主として写真、音楽、3次元モデリング、画像加工、などの研究テーマは、このパターンで実現されています。意欲的な人は、このパターンで、自分のやりたいことを見つけてくださって結構です。
研究テーマ探しを学生が独力で行うのは容易ではないですが、そのかわりに、[パターン1]の人に負けない充実感と、多くのノウハウを得ることができるでしょう。
ただし大きな問題として、学生全員が[パターン2]で研究テーマを選んでいたら、研究室は破綻する、ということがあります。
伊藤研究室の存在意義や獲得予算は、主として[パターン1]の研究テーマに支えられています。学生が誰もこれを選ばなかったら、伊藤が一人で[パターン1]の研究テーマに着手する、という非現実な状況になってしまいます。
このようなことから必然的に、何人かの学生には、 [パターン1]で研究テーマを選んでもらうことになる、という状況があることを理解してください。
言い換えれば、自分でやりたいことを見つけて自分でテーマを決められる人以外は、[パターン1]の形で研究テーマを決めることになりますので、ご理解ください。
研究室生活は、
大学3年間までの生活とは、こんなに異なります。
皆さんは研究室に配属になったら、以下の点で頭を切り替える必要があります。
- 時間割はほとんど空白になる代わりに、自分で時間の使い方を決める必要があります。
- 課題は与えられるのではなく、自分で見つける必要があります。
- 自分の成果は試験やレポートでこっそり提出するのではなく、多くの人の前で口頭発表する必要があります。
それに加えて、覚えておいてほしいことがあります。それは、
伊藤は配属学生を、学生としてではなく、研究者の卵として接するということです。言い換えれば、皆さんには、教員から言われたままの日々を過ごすのではなく、自主的に研究成果を生み出すことを期待する、ということになります。
これらを成功させるためには、これまでの3年間よりも、はるかに自立性が要求されます。 この生活を、社会に巣立つ前の助走と考えて、有意義に過ごしてほしいと思います。研究室側としても、そのお手伝いの場になれるよう努力いたします。
ここで、研究を合理的に進めるための、ひとつの方法をお勧めします。 それは、 教員や先輩をつかまえて質問しやすい時間に研究室に来る ということです。
研究というプロセスは、わからないことだらけです。わからないことをそのままにしたのでは、いつまでたっても先に進みません。 一方で、少なくとも教員は、講義や学内会議が午後に集中しがちで、それに比べると朝や夕方は比較的つかまえやすい傾向にあります。 単純に言えば、朝や夕方に来て、タイムリーにわからないことを質問する、というリズムで研究室に来ている人のほうが、合理的に研究を進めることができます。 逆に、いつ登校すれば研究が進むかといったことを考えず、自分が最も楽に登校できる時間にだけ学校に来ている人は、いくら毎日登校していても、意外と研究が進んでいない、という結果になりがちです。
こんなことも含めて、時間の使い方を自分で工夫する必要がある、ということを自覚して研究室に来てほしいと思います。
研究室には、来られる日はできるだけ、毎日来て下さい。
単に論文を読んだりプログラムを開発するだけなら、家でもできます。 しかし、同じ研究室に配属になったメンバーとの議論、助け合い、その他の日々の会話、そんなことも研究室生活の一部です。
配属学生全員参加型の研究室を目指し、お互いの研究に関心をもち、 お互いの研究に意見や質問をはさみあうことで、視野の広い研究室生活を送ってください。
このような研究室を目指すために、皆さんに念じて欲しい一言があります。それは、
です。皆さんがお互いの研究を向上させるためには、お互いの研究に積極的に質問すること。 これも研究室生活の義務である、という自覚を持って下さい。
伊藤が描く理想の研究室像の一つに、 一部の優秀な学生が活躍するというよりも、一人残らず全員が一定以上の意欲と成果をもって参加する研究室 という観点があります。 それを実現するためにも、全員の研究に全員が意見を交わす、そんな研究室であってほしいと願います。
それと同時に、思い出深い研究室生活を送ること、卒業も長く続く友人関係を築けるような研究室生活を送ること、 なども目標にして欲しいと考えています。 研究室生活は、学生時代の友人作りにおいて、ほとんど最後のチャンスです。 盛り上がって過ごした日々は、長く皆さんの記憶に、財産として残るものです。 そのような財産を皆さんに持っていただくための研究室作りを、伊藤は心がけたいと思っています。
伊藤は皆さんに、ゼミだけでなく、月1回程度の研究室の懇親会も、休まないでください とお願いすることがあります。 これも、上記の考えに基づくものだと思ってください。
※なお上記の方針は、研究室以外の個々の時間、例えば就職活動の時間はもちろんとして、 バイトやサークルなどの自由時間を否定するものではありません。
単純に卒業の単位をとるために研究室に来るのではなく、
卒業後も役に立つスキルや視点も同時に磨けるような、そんな一石二鳥な研究生活を探りたい、と伊藤は考えています。
卒論を書き上げるまでの1年間の中で、例えば
- 「どのように研究テーマを探し出せば、多くの人に注目してもらえるか」
- 「どのようにプログラムを開発すれば、来年の後輩に使ってもらえるか」
- 「どのように研究成果を発表すれば、みんなが真剣に聴いてくれるか」
というようなことを、日頃から考えて研究を進めましょう。
このような視点が身につけば、きっと社会に出てから、そのまま
- 「どのような商品を考え出せば、世間にインパクトを与えるだろう」
- 「どのように日常業務に接すれば、同僚に感謝してもらえるだろう」
- 「どのように宣伝すれば、お客様に振り向いてもらえるだろう」
という、同じような問題に応用できるのではないかと思っています。
伊藤研究室で経験したことが、社会人になってからも役に立っている という声を卒業生から聞くことがあります。このような実感を全ての卒業生に感じてもらえるような研究室作りを、伊藤は目指しています。
T字型の研究室を目指し、T字型の人材を目指す。
いくつかの場所で「社会はT字型の人材を求めている」と言われることがあります。
私の解釈では、T字型の人材とは、
縦方向に深く一つの専門を掘り下げた経験を持つ人材」
伊藤研究室の活動も、T字型を指向しています。可視化やユーザインタフェースといったコア技術を、 研究室のメンバーで共有して深く掘り下げた上で、セキュリティ、生命情報、音楽情報処理といった幅広い分野への応用を目指しています。 伊藤は研究室での皆さんの活動が、T字型の人材として成長するための一つの経験となることを、願っています。
世間には、「大学で頑張って勉強しても、どうせ社会に出たら勉強はやり直し」ということを言う人がいます。 この理屈は、必ずしも誤ってはいません。大学卒業者の多くは、大学で学んだ専門分野とは別の分野に就職し、 大学で習った専門知識とは異なる知識を勉強しなおす必要に迫られるからです。
困ったことに、この声を拡大解釈して、「大学の勉強は社会に役立たない」と考える人がいます。 さて、本当に研究室生活は卒業後の役に立たないのか? というと、決してそんなことはありません。
皆さんが研究を進める上で、 一つのテーマを深く掘り下げる過程で体得した方法論 例えばアイディアを練る経験、 情報検索、プログラミングやプレゼンテーションのスキル、などは別の分野を学び直すときにも、きっと役に立つはずです。 また、皆さんが研究で成果をあげたときの 達成感、自信 といった感情は、きっと今後の進路の励みになると信じています。
いろいろ書きましたが、伊藤研究室での生活が、単に卒業の単位をとるだけのものでなく、 もっと価値のあるものになるよう、皆さんと一緒に研究室をつくりあげたいと考えています。どうかよろしくお願いします。
最後になりますが、情報科学科3年生の研究室配属について、また伊藤研究室への学生配属の状況を、以下に述べます。
情報科学科の研究室配属は、3年生の2月中旬に開催される卒業研究発表会の後に決定されます。 各研究室への配属は、昨年度から、
という方法がとられています。 参考までに伊藤研究室の方針は、いまのところ以下のようになっています。あくまでも前例として参考にして下さい。
■ 学科の方針として2012年から「全ての研究室において定員は最大5人」となりました。
研究室配属希望者が6名以上になった場合には、教員が学生を選ぶことになります。
この選抜基準については、別途説明します。
■ 他の研究室に配属になるけども、伊藤研究室の活動にも参加したい、という場合には別途ご相談ください。 過去にも 他の研究室との融合的な研究テーマに着手して2教員で指導したという例がいくつかありますし、伊藤はそのような事例を増やすことを前向きに考えています。 また、非常に大変なことではありますが、他研究室では過去に卒業研究を2個同時に着手し、2個とも発表したという事例があります。 |