Report Vol. 3

第3回:関係者へのインタビューその1

今回は訪問先の関係者へのインタビュー内容を、いくつか紹介します。 このページには写真がありません。ダラダラと文字ばっかりでスミマセン。

■ コンピュータサイエンス学科 キャリア担当者 ■

私が訪問したコンピュータサイエンス学科には、入学、卒業、就職などのキャリアについて説明する専門員がいます。 その専門員の方に時間をとってもらい、学科の状況について質問しました。

アメリカの大学への入学手続きの時期は非常に早いそうです。 この学科の場合、ごく一般的な9月入学の学生の場合、前年の10月には願書を提出する必要があるそうです。

一般に海外の大学は日本と比べて、入学するのは簡単だが卒業するのは難しい、という印象がありますが、 ここコンピュータサイエンス学科はその印象通りの現状があります。ここ数年、当学科では

・願書を出した人は全員入学できている
・ただし、30パーセントくらいの学生が中退する

というのが現状だそうです。
ちなみに中退の理由を質問したところ、その担当者が調査した限りでは多い順に、 経済的理由、勉強についていけない、他分野への転向、だそうです。

おそらく、ある程度の割合で中退者が出ることを想定して、やや多めに入学させているのでしょう。 そして、十分に勉強をしなければ卒業できない、という厳格な姿勢で講座を開いているのでしょう。 日本の大学も(少なくとも私は)その厳格な姿勢を参考にしなければならない、と考えています。

もう一つ感心したのが、インターンシップ制度です。 当学科でも主に、3,4年生を対象にしてインターンシップの募集があるそうなのですが、その募集要項は例えば

・ネットワーク技術に自信のある学生を募集
・セキュリティの講義を履修済みの学生を募集

というように、 学部生に対して具体的な専門性を要求してくるのだそうです。日本のインターンシップ制度と比べて、なんとレベルが高いのでしょう。 これには感心せざるを得ません。 私達も、企業がそのように学生に高い期待を寄せてくれるような、そんな人材育成をするべきではなかろうか、と真剣に考えさせられました。

さらに当学科では、インターンシップの募集を全て掲示することで、どのような専門性が多くの企業に求められているかを学生に告知します。学生はこの現況をみて、自分の進路に役立つように科目を履修します。 決して「楽しそうな科目」「単位をラクにとれそうな科目」という感覚で履修するのではない と担当者は断言していました。

そして学生たちは、インターンシップでの専門的な経験を踏まえて、 4年の後期になってから、大学院に進学するか、企業などに就職するか、を判断します。

私はどう考えても、このシステムは、日本のシステムと比べて正しいと思います。 学生は4年間をじっくり過ごしてから、その後の進路を決めるべきです。 日本の企業は、マスコミのインタビューに対して、よく「企業側の求めている人材とのミスマッチが増えた」と言います。 まるで学生の努力不足のせいであるかのように聞こえることもあります。それも一因としてあるのかもしれませんが、 その前に 早すぎる(3年生からの)就職活動が一因 だという現実を反省してほしいものだと思います。

ところで就職活動に際して、当学科では採用面接対策のために、面接練習なども実施しているそうです。これも学生に対する「価値あるサービス」だろうと思います。 私も以前に、研究室の学生に対して面接練習をしたことがあるのですが、なかなか要領を得ません。まだまだ研究が必要だと痛感しています。


■ コンピュータサイエンス学科 博士後期課程卒業者 ■

今年の5月に博士後期課程を卒業し、企業に就職する卒業生に、いくつか話を伺いました。

その卒業生は、博士後期課程において優秀な研究成果を出し、多くの学会にて発表し、それを博士論文にまとめ、大学から学位を授与されました。

研究成果を博士論文にまとめて、昨年のうちに予備的な審査を受け、 指導教員から「これなら学位をもらえるだろう」という見通しを頂いた上で、今年に入ってから採用面接を受けたそうです。

アメリカの技術系企業は日本と違って、就職活動の時期が横並び的に決まっているわけではなく、ほぼ1年中にわたり、 どこかの企業が採用活動をしています。よって、研究の進捗状況を照らし合わせながら就職活動ができる、ということになります。

結果的にその卒業生は、大学や研究機関に残って研究者になるのではなく、地元(カリフォルニア州)の企業に就職しました。

カリフォルニアはアメリカの中でも気候や風土が抜群に恵まれているため、いったん住んでしまうと出たくなくなる、という人が多いそうです。
その「いったん住んでしまうと出たくなくなる」という気持ち、よくわかります…。 あ、私はちゃんと日本に帰国しますので安心してください。

これは邪推ですが、きっとカリフォルニアの大学の卒業生は、研究者として他州の大学や研究機関に就職するより、 地元企業への就職を選んでカリフォルニアに残る、という人の割合が多いのではないかと想像します。

ところで本題に戻りますが、その卒業生いわく、 少なくとも当学科では、 博士後期課程まで進学して博士号をとったほうが、一流企業の技術者として就職するのは有利とのことでした。

つまり裏を返せば、アメリカの企業は、博士後期課程での学生経験が、企業にとって有益、と評価しているのだと思います。

日本の大学で博士後期課程を修了した学生が、これと同程度、あるいはそれ以上に、日本の企業に高く評価されるようになるために、私達には何ができるでしょうか。 これは私だけでなく日本の大学全体が、真剣に考えるべき課題ではないか、と思います。
なんて言うまでもなく、皆さん考えていらっしゃると思いますが…。

ちなみにその卒業生および他の人に聞いたところ、博士後期課程に進学して、実際に博士号をとれるのは半分強?とのことでした。 それでもアメリカの大学で博士後期課程に進学する人が日本より多いのは、 ひとえに、博士号取得後の就職状況がいいこと、あるいは残念ながら中退しても人生を再設計するための敷居が低いこと、でしょう。
それとは別に、アメリカの大学は資金力があるので、博士後期課程に進学する学生の学費や生活費をサポートしている例が多い、ということも進学率の高さの一因かと思います。

平たく言うと、日本と比べて、博士後期課程への進学のリスクが低い、ということでしょう。日本の教員として、実にうらやましい現実でもあります。
資金力に関しては、うらやましいなんて言ってないで、自分も頑張る必要がありますが…。

 

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