Report Vol. 9

第9回:最終週は学会参加

今回の出張期間の終盤に、研究室の大学院生2人の学会発表が重なりました。
せっかくの機会なので、発表を予定している学生にデービス校に来てもらい、 デービス校にて発表練習をすることにしました。

Ma教授の研究室に到着して早速、2人の大学院生は、 70インチほどの大型ディスプレイに研究内容を映し、 20人近くの学生の前で5分ずつ発表しました。 当然ながら、英語での発表 です。

下の写真は、2人の発表を聴講するMa教授および学生達、そして発表終了後の集合写真です。 非常に多くの学生が集まってくれているのがわかります。
私自身は今回、研究室では何も発表をする機会は無かったのですが、 私が発表するより、学生が発表することで、多くの学生が集まってくれたことと思います。

ちなみに上の2枚の写真ですが、約3分の2は博士後期課程の学生です。 こんなに多くの博士後期課程の学生が、互いに切磋琢磨して研究生活を送っているのですから、 アメリカの技術レベルが高いのも当然です。 日本はこのままでいいのか、本当に考えさせられます。

5分程度ずつの短い発表だったこともあって、現場の学生からは非常に多くの質問が出されました。 わからないことは納得するまで質問を繰り返す、現場の学生の熱心な姿勢を、 改めて強く実感しました。 日本の研究室も、こちらの学生達の熱気を見習うべきだと思いますし、 なにより私自身が、この熱気を忘れないようにしたいと思っています。

2人の発表の後は、逆に現場の学生数名の研究内容を見せていただきました。 下の写真はそのヒトコマです。

さて、時間の経つのは早いもので、 この学生発表をもってデービス校ともお別れになりました。 私は上述の2人の大学院生と一緒に、カリフォルニアを離れ、 学会会場に移動しました。

今回参加した学会は、 IEEE VisWeek というもので、 毎年800人近くを集める大規模な学会 です。 私の研究分野では間違いなく世界最大の学会です。 ただし日本人の参加は非常に少なく、例年10人くらいしか見かけません。
私が従事する可視化という研究分野は、 業界の世界的な規模に対して不当に日本人が少ない、といつも実感しています。 ただし私の場合、この研究分野に日本人が少ないゆえに得をしている、 という面も多々あるのですが。

講演の聴講席の様子をお見せします。非常に多くの人で埋まっています。

会場はオハイオ州コロンバス市にある、 Hyatt Regency Columbus という一流ホテルです。

どうでもいいかもしれませんが、ホテルの自室をお見せします。 よさそうなホテルだということを実感してくださいませ。

この学会では2人とも、ポスターセッションという企画にて発表します。 ポスターセッションでは、まず1人1分程度の非常に短い登壇発表をします。 その後1日1時間程度、合計3回、A0判程度の大きな紙に研究内容を印刷して (これをポスターと呼びます)その前に研究内容を説明します。

下の写真は、IEEE Information Visualization という会議の中で、 日曜日に開催された1人目の学生の1分間登壇発表と、 その時スクリーンに投影される発表内容(タイトル)です。

その下の写真は、A0判のポスターの前で、学生が来客に研究内容を説明している場面です。

下の写真は、IEEE Visualization という会議の中で、 火曜日に開催された2人目の学生の45秒間(短い!)登壇発表と、 その時スクリーンに投影される発表内容(タイトル)です。
※すぐ前に座っている人の金髪が大きく写ってしまい、 しかも撮影時のカメラが自動調整モードだったために、 発表者が暗く写ってしまいました。すみません…。

その下の写真は、A0判のポスターの前で、学生が来客に研究内容を説明している場面です。 ちなみに聞き手(指をさしている男性)は、この業界では世界的に有名な研究者です。

ポスター発表会場の全体の様子をお見せします。 火曜日のポスター発表には、(1人1杯だけですが)飲み物も振る舞われます。

火曜日のポスターのほうには、 Best Poster Nominees (最優秀ポスター候補) の表彰がありまして、私達もありがたく表彰をいただくことができました。 最優秀ポスター賞をいただくことはできませんでしたが、 それにしても嬉しいです。私達の業界では世界最大の学会ですから。
※日曜日のポスターのほうにも、同じ表彰を企画してほしかったですねぇ…。

こんな感じで無事に、ポスター発表を終えました。

以下は、この学会参加の内容に関連して、学生の皆さんへのメッセージです。


■ 3年生以下の皆さん ■

お茶大の情報科学科では、4年生に進級する直前に、研究室への配属があります。 そして大学院に進学すると、さまざまな学会での発表の機会があります。

上記のように、何百人も集まる世界的な学会で、英語で発表をする、 というのは3年生以下の皆さんから見たら他人事かもしれません。 しかし、お茶大の大学院生にとって、このような機会は決して珍しくありません。

そして、このような経験は、就職活動での自己PRや、就職後のキャリアにも、 きっとどこかで役に立つだろうと思います。

このような機会に恵まれるのは、研究室に配属になってからのことです。 しかし配属から卒業までのわずか1年間で、このような機会が巡ってくるわけがありません。 もっと長い年月をかけて研究成果を積み重ねることで、ようやく アメリカやヨーロッパなどで華々しく発表をする機会が生まれてくるわけです。

そのためにも、ぜひ 大学院に進学して、3年間(あるいはそれ以上)の研究室生活で経験を重ねて、 それを武器にして社会に進出 しましょう。

このような出張報告のページにて、将来紹介されるのは、あなたかもしれません。

■ 大学院生、および大学院進学予定の皆さん ■

皆さんにはきっと、少なくとも日本国内での学会発表の機会が巡ってくるでしょう。 しかし可能であれば、日本国内にとどまらないでください。

もし皆さんの分野が、世界有数の学会での発表を
目指せる分野であるならば、ぜひとも目指してください。

世界には私達よりも優秀な人が、非常にたくさんいます。 そのような世界的な人達が、皆さんの発表を熱心に聞いてくれる、 そんな機会を体験してほしいのです。 きっと皆さんはそこで、世界のレベルの高さを実感するでしょうし、 また「やってよかった」という充実感を持つでしょう。
また当然ながら、英語をもっと勉強しなければ、というモチベーションにもつながるだろうと思います。

皆さんの中には、研究職ではなく、開発やSEなどの職種に就く人も多いと思います。 しかし研究職に就かない人にとっても、 大学での研究経験が役に立つことが、きっとあるはずです。 なぜなら企業での開発やSEの仕事は、 「他社に勝る製品やサービスを生み出し、それをお客様に効果的に売り込む」 ことが重要な本分であり、しかもその業務プロセスは、研究における 「新しい理論や技術を生み出し、それを学会で効果的に発表する」 という作業と共通性が高いからです。

ですので、研究職に就く人も、そうでない人も、 大学院での研究と学会発表において、できるだけハイレベルな経験を積んでから、 社会に進出してほしいと思います。ぜひとも頑張って下さい。


最後に、どうでもいい写真。
(左)デービス校の廊下で見つけた、現在位置を示す掲示。 正しいのか間違っているのかさえ、全くわかりません。
(右)学会会場の客室の空調。「冷房は華氏60度以下に設定せよ」って、華氏60度=摂氏15.5度なんですけど…。
※学科の先生から、「どんなに寒くても暖房は華氏60度以下に設定せよ」 という意味ではないか?というコメントをいただきました。 ただし、仮にその解釈が正しかったとしても、やはり納得できませんが…。

 

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