Report Vol. 1

第1回:なぜ海外に滞在するのか

私こと伊藤貴之は、2014年8月6日から9月11日まで、 シドニー大学 への滞在を中心とするオーストラリア出張に行かせていただいてます。
シドニーは東京から行くにはとても便利な場所にあります。夕方に成田に行き、夜出発の便に乗って寝て起きれば翌朝には到着です。時差も1,2時間しかありません。パスポートと外貨と英語力が必要なことを除けば、夜行バスで西日本に行くのと大差ない手軽さです。

最近では大学の国際化が強く望まれていますが、実は大学教員の多くは世間に言われるまでもなく、本来の職場を離れて海外の研究機関を訪問する機会を得ることに憧れています。 海外の大学では、この制度をサバティカルと呼び、多くの現場において半義務化しています。

では、職場を放置(?)してまで別の研究機関を訪問するサバティカルの意義は、どこにあるのでしょうか。 私なりの解釈では、サバティカルの意義は、

いつもと異なる(主に海外の)環境に身を置くことでリフレッシュし、
新しい共同研究体制を構築して研究成果をあげることで、
新しい知識や経験を身につけ、研究者として大きくなる

という点にあるのではないかと思っています。

最近では国際的な共同関係による学術論文の割合が急増していると聞きます。 つまり、研究者が海外に出向いて共同研究関係を構築することが、学術研究をリードする上で重要かつ有効な一手段ということになります。

しかし残念なことに、このような国際的背景とは全く裏腹に、日本では国立大学法人の運営費交付金は削減の一途をたどっており、結果として多くの大学では教員数を削っています。 私の勤務先でも、ある一分野を担当する教員は私一人だけ、しかも助教やポスドクといった若手研究者もナシ、ということで私が不在になると代わりの人がいない体制で仕事をしており、なかなか長期的にその場所を抜けるのが難しい状況にあります。

とはいえ、嘆いてばかりもいられないので、せめて1ヶ月でも2ヶ月でも、自分の環境の中で無理のない範囲で新しい国際関係を構築するために、このたびわがままを言って出張させていただくことにしました。

私の不在によって多大な不便をかけてしまった伊藤研究室の学生の皆さま、勤務先学科の皆さま、共同研究や学会運営等でお世話になっている皆さまに、深くお詫びいたします。

 

私は過去にも同じような海外滞在を経験しています。具体的には、 2008年9,10月に、カリフォルニア大学デービス校に 滞在しました。

この滞在でも新しい研究課題に取り組んだのですが、実質6週間という短い研究室滞在にしては効率的な成果をあげられたと思っています。具体的には以下の形で研究内容が活用されました。

今回のシドニー滞在でも、これと同様な成果をあげたい…という思いで日々の研究に臨みたいと考えています。

しかし一方で、6年前の滞在報告をすると、そんなに成果成果と言っていたら研究留学の敷居が高くなってしまう、もっと成果にこだわらずに誰でも気軽に留学を志ざせるような雰囲気をつくるべきだ、という指摘を受けたことがあります。全ての人の立場に考慮して成果を報告するのは難しいものだと思いました。

 

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