伊藤研究室が取り組む「可視化」という研究分野では、最近では社会科学に関する応用が増えています。 このページでは、可視化に関する伊藤研究室の研究テーマで、社会科学に深く関係があるものを紹介します。

 

クレジットカードの盗難や偽造、およびそれに伴う不正利用は、深刻な社会問題となっています。 特に近年では、スキミングなどの技術を用いた巧妙な不正利用が多く、その被害を最小限に食い止める技術の確立が望まれています。
この図は、クレジットカードの不正利用履歴の分布を可視化したものです。 現在ではクレジットカード関連企業の多くが、不正利用かもしれない不自然な購買に対して、警告を発するシステムを運用しています。 このシステムが検知した不正利用を分析すると、不正の発生した時間帯や商品、販売店などには一定の相関性があることがわかっています。 この可視化の研究は、クレジットカードの不正利用にしばしば見られる手口を確認し、 その手口を有効に検出するためのルール作りに貢献できると考えられます。
なお本研究は、インテリジェントウェイブ社との共同研究によるものです。

 

計算機ネットワークに悪意をもって侵入や攻撃を試みる人が増えています。 その被害として最近、ネットショッピングサイトのサービス妨害や、 企業・自治体の機密情報漏洩、といった深刻な事例が報告されています。 このような悪意ある攻撃と侵入をリアルタイムに検知することで、 被害を最小限に食い止める技術の確立が望まれています。
この図は、計算機ネットワーク上の多数の計算機に及ぶ、不自然なアクセスの分布を可視化したものです。このような可視化結果をリアルタイムで監視することにより、計算機ネットワークの管理者は悪意ある攻撃と侵入を早期に検出し、被害を小さくすることができると考えられます。
なお本研究は、京都大学高倉准教授との共同研究であり、 その一部は中間団体JPCERTコーディネーションセンターからの受託によるものです。

 



大量の文書の中から流行や傾向を抽出することは、多くの分野で有用であるとされています。 例えば大量の新聞記事の中から関連性のある一連の記事を抽出する、学術論文や特許出願の中から共通の技術を抽出する、などの点で有用であるといえましょう。

この図は「左京と右京」という技術を用いて、毎日新聞の1998年のビジネス記事の分布を可視化したものです。 左側には我々自身で選んだキーワードの出現分布、右側には関連性の高い記事をグループ化した結果を表わしています。 この可視化技術では左側と右側で相互操作が可能なので、これを駆使することによって、新聞記事に関する細かい関連性を掘り下げて発見することが可能になります。
なお、本研究で用いた新聞記事データベースは、 「動向情報の要約と可視化に関するワークショップ(MuST)」によって提供されました.

なお「左京と右京」は、ビジネス記事の可視化だけでなく、 論文誌情報の可視化にも拡張されて現在にいたっています。

 

ウェブサイトの設計者や管理者、さらにインターネットビジネスに関わる人は、 どのような人がどのようにウェブサイトを閲覧しているか、常に注意を払っています。 私達は、多数の人が同様なページの組合せでウェブサイトを閲覧するパターン (アクセスパターン)に着目し、その可視化手法を開発しています。
この図は、ウェブサイトのアクセスパターンを可視化した例です。 円または正方形のドットがウェブページ、その間に引かれた線分がリンク、 円に塗られた色がアクセスパターンの種類を表しています。 この可視化結果から、どのようなアクセスパターンが存在しているか、 またアクセスパターンを構成するウェブページ群がどのようにリンクをたどってアクセスされているか、 といった状況を観察することができます。

 

企業のプロジェクト管理をはじめ、多くの業務現場において、その業務の進捗状況を細かいタスクの集合として管理することがあります。 この進捗状況を構造的に観察することで、業務の合理性を評価することが可能になると考えられます。
この図は、タスクの集合を階層的に表現し、その負荷を色分け表示したものです。このような可視化によって、業務の負荷が特定の箇所に集中していないか、業務の遂行のタイミングが合わなくて無駄が生じていないか、といった業務の合理性を評価することが容易になると考えられます。
なお、このような可視化手法は企業のタスク管理に限らず、時系列に沿って並列的に実行される各種の問題に適用が可能です。 我々は並列計算機のプログラム実行状況を監視する目的でも、この可視化手法を実験しています。